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シリア人の苦悩 2

シリア人の苦悩 2

ホッサムは、2005年に175,000ドル(約2000万円)でシリア、ホムスに家を買った。シリアを愛する彼は、引退後は家族でシリアで暮らすことを望んでいた。月約35万の支払い。財産のすべてを投資していた彼は内戦ですべてをなくした。あと3年ローンが残っているらしい。
 彼曰く、破壊された家のローンに35万、デュバイの家に16万、そのほか支出に23万、合計74万。現在の給料は当然これよりも少ない。彼は毎月借金を重ねながら生活している。
 シリアはもともとロシアと親交が深い。ロシアにとって中東の唯一の橋頭保。早々にアサド政権支援を表明、米国は人権問題などから反政府軍を支援、まさに代理戦争の様相だ。また米軍のイラク撤退などの状況に乗じ、ISが台頭。シリアなどに侵攻した。人民はこうした政治と内戦に翻弄され、多くの死者、難民をうみだすとともに、シリアは中東の火薬庫と化している。
 いま、シリア難民はレバノンに150万、トルコに200万人流出、ヨーロッパ各地が受け入れに難色を示すなか、カナダはシリア難民の受け入れに積極的だ。
 彼の友人の多くもカナダに渡った。学校など公共機関は無料にするなどの待遇、とくにクリスチャン関係は優遇されるそうだ。
 彼の弟2人は米国で働いている。このため、米国のVISAを申請したが、3か月前にシリアの母親に会いに行ったことで移民局で却下された。ただ、再チャレンジする予定。あと3年たって借金の返済が終わったら、どうするか。少なくとも瓦礫のヤマとなったシリアに帰れない。難民受け入れにやさしいカナダに渡るか。兄弟のいる米国に行くのか。一番下は2歳児。3人の子どもを抱え今後、どうしたらいいのか、苦悩している。
 「アラブの春」とは一体なんだったのか。「独裁者」打倒まではよかったが、その後はカオス。王政のなかの民主主義とは何なのか。「その後」のない紛争や内戦は、結局、多くの国民を不幸にするだけでしかない。(2016-02-07)

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原宿新聞編集長 佐藤靖博

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