特集/コラム

【人物登場】2010-11-01

”ゲリラレストラン”で、感情を食で表現 諏訪 綾子さん(FOOD CREATION主宰)

 東京では初の”目と舌で体感する“大型パフォーマンス&エキシビション「諏訪綾子展 ゲリラレストラン LOST TONGUES」が、今秋10月上旬、ラフォーレミュージアム原宿で開催された。これまでの活動の集大成ともいうべきもので、「感情を食で表現するアーティスト」としての評価を高めている。

”ゲリラレストラン”で、感情を食で表現 諏訪 綾子さん(FOOD CREATION主宰)

 「失われた感覚を呼び覚ます挑発のディナー」――そのキャッチコピーからして、すでに”挑発的“。「ミステリアスなウェイターに調理人、想像をかきたてる食べ物・・・。五感を刺激する新しい食体験」と続く。
 “諏訪綾子展”を掲げるももの、単なる展示ではなく、まさに“大型パフォーマンス&エキシビション”。参加ゲストは、ミステリアスなキャストが運ぶ「感情のテイスト」を味わう。「空腹を満たすためでもなく、新しい食の価値を創造する気鋭アーティストの世界」を体感、というわけだ。
 そのスタイルは、ただ、食物・料理を提供するというのではなく、環境づくりから始まり、食べるという行為へと導く。サーブキャストのメイクやファッションもユニークだ。そのコスチューム・ディレクションは、YOSHIKO CREATIONの梶谷好孝さん(よしこ=女性)が担当した。
 ジュエリーブランドを手がける梶谷さんとは、”クリエイションつながり”で、その後も10月27日(水)〜29日(金)に、表参道のスパイラルにおいて、「TASTE OF CREATION」として、コラボ展を開催した。

 ラフォーレミュージアム原宿での展覧会では、380年余の歴史を持つ金沢の老舗酒蔵「福光屋」と開発した、初の食品「感覚であじわう感情のテイスト/サケトニック・エモーショナルエッセンス」を発表。サケトニックはアルコールだが、エッセンスは酒ではない。新商品でも喜び、せつなさ、心地よさ、怒りといったテイストを表現している。
 コラボレーション企画や海外展(パフォーマンス)の話が、ずいぶん持ち込まれる。
 今秋は、那須での「SPECTACLE IN THE FARM 2010」に参加する。新しいかたちの地域活性化を生み出す「旅のアートサーカスプロジェクト」で、11月27日〜28日に栃木県・那須エリア一帯で開催する。ファッション、ダンス、演劇、文学、音楽、食・・と、多岐にわたる若手アーティストらよる芸術作品や文化の発表を、観光/宿泊施設や広大な自然を活用して行う。
 ここでは、老舗の温泉旅館と一緒にフードパフォーマンスを披露し、「次世代の新たな文化創造をはぐくむべく、業種業態を超えた人々が地域を核に連携することで、文化振興と地域活性化を図る」という活動の一翼を担う。

 すわ・あやこ 1976年石川県羽咋市生まれ、金沢美術工芸大学を卒業後、東京に出て、デザインプロジェクト集団「D&デパートメンプロジェクトクト」の1号店立ち上げメンバーとして参加。2006年から「胃までコンセプトを届けます」を掲げ、“フードクリエイション”の活動を開始し、主宰。2008年金沢21世紀美術館で、初の個展「食のデザイン展〜感覚であじわう感情のテイスト」を開催。この「実際に食べて、感じることができる表現方法」が大きな反響を呼び、高評価を得て「これなら、いける」と感触をつかむ。
 新宿伊勢丹地下食品売り場のリニューアル1周年記念プレスイベントや横浜トリエンナーレ2008のオープニングレセプションなどで、フードパフォーマンスを披露。ほかにも展覧会や企業と組んだコンセプチュアルなケータリングサービス、商品開発など、「食」にまつわる様々な取り組みで注目を集めている。
 哲学は「見たことのないものは、きっと素晴らしい」。趣味は特にないが、自身の表現活動は「自分の生き方みたい」という。「計画的に物事を進めるタイプではない」と自己分析し、「人々との出会いや新しいことに挑戦した結果の気づき」などから、現在の「フードパフォーマンス」という表現に至った。
 このパフォーマンスに、スラリとした長身が、ことのほか映える。

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