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【人物登場】2014-02-28

安心できる街づくりに貢献したい 小田啓二さん(日本ガーディアン・エンジェルス理事長)

「困っている人に手を差し伸べ、間違っている行為には声を出す。そして誰もが安心して暮らせる街をつくっていきたい」。特定非営利活動法人「日本ガーディアン・エンジェルス」理事長、小田啓二さんの願いだ。

安心できる街づくりに貢献したい 小田啓二さん(日本ガーディアン・エンジェルス理事長)

「ガーディアン・エンジェルス」とは、1979年、米国ニューヨーク市で、13人の若者が地下鉄のパトロールを始めたことから誕生した防犯NPO団体。その後、犯罪抑止活動や麻薬撲滅キャンペーンを実施し、全米に拡大した。トレードマークは赤いベレー帽と白いTシャツ。現在は、日本を含め世界17か国で活動の輪が広がっている。

小田さんは、ボストン大学に在籍中、友達に誘われて地元のガーディアン・エンジェルスに参加。即「自分のやりたかったのは、これだ」と直感したと言う。その後、創設者のカーティス・スリワ氏から声がかかり、ニューヨーク市本部へ。21歳で本部長に抜擢され、400人ものメンバーを束ねることになった。「ネイティブではない外国人ということで不安視もされたが、団体が目指していたのが、まさに『若者にチャンスを与える』こと。その一環で自分にもチャンスが巡ってきたのだと思います」。

小田さんが東京で支部を設立したのは、1995年。おりしも阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件が起こった年だ。「日本でもボランティアが認知され、また安全神話が崩壊したことで、防犯の意識も高まっていた。一人で始めるのは不安だったが、カーティスに背中を押され、やるしかないと決意しました」。

最初は、犯罪防止や環境美化活動をするボランティア団体であることを、広めるところからスタート。繁華街のパトロールや、ゴミ拾い、違法なビラ・看板の撤去などを中心に行った。活動を揶揄したり、批判する人もいたが、労いの声や、寄付の申し出などの支援もあり、それが励みになったという。

小田さんには、忘れられないエピソードがある。「原宿表参道のイルミネーションのイベントの時です。期間中は、地元の商店会(現・原宿表参道欅会)や町会の方たちがボランティアで防犯活動をしているのですが、『一緒にやろう』と声をかけてくれたのです。それからも協力をいただき、自分たちの活動が認知されていくようになりました」。

現在は、防犯パトロール以外にも、小・中学校で安全セミナーを開いたり、防犯セミナーを開くなど、安全に関する啓発活動も行っている。「行政に頼るだけでなく、一人ひとりが防犯の意識をもつことが大事です。そして、地域の住民が協力し合い、『自分たちの街は自分たちで守ろう!』となればいい。しかし、過去の日本には、そんな習慣があったのです。その伝統を守り、安心できる街づくりに私たちも貢献したい。地域の一員として街に溶け込み、必要な時に振り向いたら、赤い帽子がいるというのが理想ですね」。 (北野)


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小田啓二 
1971年、北海道北見市生まれ。1989年、高校の交換留学で渡米し、同年ボストン大学に入学。1990年、ガーディアン・エンジェルスに参加、2年後にニューヨーク市本部長就任。1995年、東京支部(現日本ガーディアン・エンジェルス)を設立し、2002年、認定NPO法人に認定される。現在、全国に25の支部を設置。

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