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【エリア特集】2006-08-08

パリの画家本庄谷さんの個展

オーベール・スー・オワーズ:日本人画家本庄谷さんの個展を訪ねて

パリの画家本庄谷さんの個展

7月も終わりに近づき猛暑もようやく収まった頃、パリ近郊のオーベル・スー・オワーズを訪れた。パリ北駅から列車を乗り継ぎ約1時間半、こんなに静かな緑の豊かな地があるのかと驚く。この地には、丘の上にオーベールのシャトーがある。

18世紀ルイ13世のころイタリア人の金融家によりベルサイユ宮殿の一角を思わせるような庭のある現在の様式になったそうだ。シャトー内には、印象派が生まれた時代を再現したエクスポジッションもあり、素人に時代背景がよくわかるように展示されている。

このシャトーのオランジェリーでは、7月初旬より8月31日までパリで活動をしている画家本庄谷さんの展覧会が開かれている。

本庄谷さんは、フランスに移り住んで20年余、いろいろいな形で生計を立てながら絵の修行を積み自分の作風を築き上げてきた。花や岩などの静物、季節などの自然をテーマに、光と影、静と動、空気、音、時などに主眼点を置いた作品、数十点が展示されている。抽象化した作風の中には、黒やグレーなどの濃淡を使いこなした日本の水墨画を感じさせる作品もある。数年前このシャトーでのゴッホにちなんだコンクールでグランプリを獲得し、今回の個展にいたった。作品はネット(http://www.honjoya.net )からもアクセスでき、この後日本での個展も計画されており、これからが期待される。

実はこの地で最後を遂げたゴッホは喧騒なパリから逃れて静けさを求めてオーベールにたどり着いた。1800年代後半の頃である。彼はここに滞在中の60日間に毎日一枚のペースで精力的に絵を描いた。当地の畑や教会を描いた作品は世界のあちこちの美術館に飾られている。

今年没後200年を迎えたセザンヌ、ドービニーらが後にゴッホの担当医にもなった精神科医ガシェを訪ねて疲れた心身を癒し、当地の風景などを題材に作品を手がけたことも興味深い。

こじんまりとした田舎町で、都会の空気を逃れ一日のんびり散策を楽しみながら名匠の描いた風景を堪能するのもいい。

2006.8.7. (N. Suzuki)

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