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シリア避難民の実態  現地活動家らが現状を報告

シリア避難民の実態  現地活動家らが現状を報告

 2010年〜2012年に、アラブ世界で広がった民主化を求める反政府運動「アラブの春」に端を発し、諸外国も参戦しての泥沼化した紛争に発展してしまっているシリア。UNHCRによると、2200万人いる国民のうち400万人以上が避難民として国外に逃れ、760万人の国内避難民を加えると人口の過半数が難民化しているという。家を失い、家族を失い、故郷を失った彼らに、私たちにできることは何か。国連大学(渋谷区神宮前)は26日、現地で活動してきた有識者及び出身者4人をゲストに、「メディアから見えないシリアの人々の暮らし」と題した講演会を開催。100人を超える参加者が足を運んだ。

 国連をはじめ国際機関での復興支援、子供たちの生活支援や社会心理的ケアなどに携わってきた田邑恵子氏は、シリア人の生活実態について食に関する話を織り交ぜながら写真を使って紹介。教育熱心な国民性により、親は子供にきちんとした教育を受けさせるため、保護者らが資金を出し合って「コミュニティ学校」を運営したり、子ども達の将来のため安全な環境で勉強できる海外移住を決断しブローカーに大金を払って避難している実態を報告。また、東日本大震災の被災者の方々の実態と対比させながら、「被災者の方々も自分たちは国内における難民だと話していた。彼らが失ったのは家や物だけではなく、これまで築き上げた自分の立場や地域との繋がりを失ったことに直面。自分というアイデンティティの喪失に気付かされ、顔を持たない難民となったことを実感し、自身を支えきれないほどの喪失感を味わっていた。大切な人や故郷、家などを失う経験の辛さに国境はない」とし、「援助を貰わずに働きたいというシリア人の自尊心を傷つけない支援について考えてほしい」と協力を呼びかけた。
 続いてアレッポ博物館客員研究員の山崎やよい氏は、シリア地域の歴史を振り返りながら、この地で発生した人類史を物語る古代文明の人類遺産の価値と民族性について解説。「ギリシャ文化やキリスト教、イスラム教などと様々な文化や宗教を全て受け入れてきた地域。寛容さや多様性が民族の中に息づいており、多様性を持った文化としてその伝統が引き継がれている。故に、シリア人がいるからこそシリアという国を形づくることができるのであり、シリア人がシリアを創っていかなければならない」と訴えた。
 また、留学生として日本に避難しているターレク・カトウラミーズ氏は、「ダマスカスの日常及び内戦の中の安定性という異常」について解説。ダマスカスは他の地域より治安は良いが、1500%ものハイパーインフレとなり、物資が手に入らず停電も頻繁に起きている状況により、近隣諸国への避難が続いている。特に英語ができる若者は、将来性がある海外へ避難する人が多いと指摘。一方で、国内に留まっている住民は、毎日のように経済的・精神的・感覚的なプレッシャーにさらされているが、海外へ避難することは簡単ではなく、住み慣れた環境や家族との絆を手放さなければならない状況に苦悩している。生き延びるために沈黙を保って生活している」との実情を語った。
 最後にAAR Japanでシリア難民支援を担当している景平義文氏は、トルコへ避難した歯科医師の現状をドキュメンタリーで紹介。言葉や就労の壁がある中、生きるために不法労働せざるを得ない状況で、自尊心を傷つけられ不安な毎日を過ごしている実態を報告。「労働許可は必要だが、地位が保障されないため、何処に申請すれば許可が下りるのかが不明。受け付けて貰えなければ生活していけないため、難民認定され地位が保障される欧州に避難する人が増えている」と解説した。

 参加した会社員の森千鶴さん(32)は、「ツイッターで情報が回り、メディアでは報道しないシリアの草の根レベルの活動の話が聞けると思い参加。貧困のイメージしかなかったが、その中でも助け合い、分かち合う彼らの生きざまに胸を打たれた。彼らの生活基盤を支えるために、私は何ができるのだろうかと考えさせられた」。学生の中尾はるかさん(24)は「国連のメーリングリストを見て、現場での活動の話が聞けると思い参加。彼らの自尊心を傷つけない援助について考えさせられた。助けてあげなきゃという上から目線ではなく、同じ人間として」と感想を語った。
 田邑氏は、誰もができる支援として、無関心が人道の敵である故、ヾ愎瓦鮖ってもらう、∪気靴っ亮韻鮨箸肪紊韻討發蕕Α↓自分の周りに広める、じ豎悗箘緡泥椒薀鵐謄アとして直接的な支援を行う、ゴ麌佞鮟犬瓩襦雇用創出の支援を行うことなど、できるところから始めて欲しいと呼びかけた。

 主催した国連大学ライブラリー部門の松木麻弥子氏は、「これまでは専門家の講演と著書の紹介のセットで講演会を開催していた。今回のような写真展と現地で活動する有識者のトークセッションは初の試み。晴天に恵まれた休日にもかかわらず多くの方が参加してくださり驚いている。参加してくださった皆さんの支援の意識が高まるようであれば、シリーズ化していきたい」と語った。
(2016-03-27)

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