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原宿発の音楽を世界に 西田知己さん(株式会社 JET ROBOT 社長)

原宿発の音楽を世界に 西田知己さん(株式会社 JET ROBOT 社長)

 数々のデザイナーズブランドの誕生、竹の子族やバンドブームなどの例を挙げるまでもなく、原宿は常に新しい文化の担い手たちが集う場所として知られる。1970年代に、浅井慎平氏や糸井重里氏など錚々たる面々が揃って原宿に事務所を構えていたことは、この町の本質を語る上で見逃すことのできない事実だ。原宿では常にそうした野心ある若者こそが正統と呼ばれ、彼らとともに町も発展を続けて来た歴史がある。 
 (株)JET ROBOTは世田谷に本社を置くインディーズ専門の音楽配信業者だが、昨年11月より原宿駅前・竹下通り脇にてライブハウス兼カフェ「Live & Cafe 原宿JETROBOT」を展開しており、自らの表現の場を求める若いミュージシャンたちに、ステージと会社によるマネジメントを提供している。
 代表取締役社長の西田知己氏は40歳。自身のミュージシャンとしての活動に一区切りをつけた5年前、35歳の時にインターネットによる音楽配信の会社を創業した。知人からは「そのビジネスをやるには、もうすでに出遅れている」と言われるタイミングだった。
 だが、日本において当時考えられていた「音楽配信」は、ストリーミングで曲を数十秒程試聴するためのものか、そうでなければCDをネットで売る物販の仕組の枠を出るものではなかった。まだ20世紀だったほんの5年前、日本には本当の意味での音楽配信が行われるための土壌、インフラが整備されていなかったのだ。従ってインディーズのミュージシャンをネットでプロモートしようとする先行企業は当時いくつかあったが、その相当数がこれまでの5年の間に、事業撤退を余儀なくされたと言われている。
 状況を劇的に変えたのが、米・マッキントッシュ社製の携帯用音楽プレーヤー「i-pod」の爆発的普及だ。このプレーヤーによって、音楽ファンの視聴形態にはCD登場以来の一大変革がもたらされた。西田氏自身、ごく当たり前のこととしてネットで音楽データを買う時代が、ここまで早く到来するとは確信していなかったという。しかし、社長を含めて社員3人、所属するアーティスト5組の当社が先行企業と伍していくには、コストを抑えられるネット販売の形態が主流となることは絶対条件だった。
 今日の音楽界の主流に相容れないアマチュアバンド、メジャーで一度デビューしたものの、「売れる路線」に無理に矯正され、自分を見失って事務所を去ったシンガー。西田社長の元に若い音楽志望者たちが集まる動機は千差万別だが、クオリティさえ高ければ、その人固有の才能をあるがままに伸ばす方針のもと、いつしか所属ミュージシャンは600人に迫るまでになった。昨年原宿駅前にカフェ兼ライブハウスを開いたのは、開花しきらない才能は発表の場を与えることで想像を超えて鍛えられること、さらにひとつの才能は他の才能と出会うことで、また違う形の才能として生まれ変わることを知っているからだ。事実、このライブハウスで触発しあうことで、新たにバンドを組み始めたミュージシャンはすでに何組もいるという。
 彼らのCDを聴いてみて驚くのは、そのメロディの普遍性だ。かつてインディーズといえば、バンド名にしても音楽性にしても殊更に攻撃的かつ先鋭的なのが普通で、ある意味では「暗い」という印象も拭えなかった。しかし、同じくインディーズと呼ばれる彼らの音楽は、テレビで日常的に耳にする没個性的な音楽とは全く趣が異なるにもかかわらず、ごく自然体で、聴いていてなんとも心地がいい。
 技術の革新は、肩肘張って世間の価値観に抗うことはなくとも、歌ったり演奏するのは大好きだという普通の若者たちに大きく道を開いたようだ。JET ROBOTではこの4月にもサイトの大幅リニューアルを行い、彼ら所属ミュージシャンたちの楽曲をネットで安価で販売する体制を、これまでよりいっそう強化する方針だ。
 そうした所属バンドの一つである「me−ISM」のボーカル山崎優子は、昨年高い評価を受けた映画「リンダリンダリンダ」にも主人公である女子高生4人組の先輩生徒役で出演、僅かな時間のうちに圧倒的な歌唱力とギターの腕前を披露し、アイドル女優目当だった観客の度肝を抜いた。
 西田氏は、原宿において無名の若者たちが歴史を作ってきた事実を知っている。その原宿で、誰におもねることもない原宿発の文化を作り上げ、世界に向けて発信することが、経営者として彼が思い描く最大の夢だそうだ。

JET ROBOT(2006-03-08)

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