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アンダー40世代思想家が語る、政治、社会、国家

アンダー40世代思想家が語る、政治、社会、国家

 1970年代生まれを中心とした、気鋭の若手研究者9人によって編集・執筆された思想専門誌が先月創刊され、いま話題を集めている。
 4日にはこの新雑誌「VOL」(以文社)の創刊を記念して、青山ブックセンター本店(神宮前5)で、編集委員のうち3名によるトークショー「『脱−政治化』する現在をめぐって」が行われた。
 編集委員の一人・萱野稔人(1970年生、政治哲学)は、昨年上梓した「国家とはなにか」(以文社)において、グローバリゼーションとナショナリズム、国家と暴力の関係を真正面から判りやすく語り、各界から賞賛されたこの世代を代表する論客。トークショーでも時にフランスの哲学者ランシエールなどの論を引用しつつ、日本社会を侵食する構造的なねじれを批判した。
 「『官から民へ』を合言葉に見境のない規制緩和と民営化が進んでいるが、法律が緩められるということは、必然的に法律を裁量する官僚の役割も高めるということ。現に小泉政権が発足して以来、官僚の民間への天下りは爆発的に増加している。キャッチフレーズとは真逆のことが、現実には起きている」(萱野)
 「魂の労働」(青土社)の著者・渋谷望(社会学)は1966年生。この日登壇した3名の中では最年長だが、過去にも「いまの三十代より上の世代が知らないことがある。階級格差の拡大だ」とたびたび発言。正規雇用層と非正規雇用層(フリーター)との間から始まる階級格差拡大の問題は、もっとも抵抗が弱い若者の世代から始まるため、それより上の世代には実感として理解できないことを指摘している。
 「『格差社会』という言葉は、現状を指し示すものしてまだまだ甘い。だから『格差があるのは仕方がない。昔から同じことはあった』などと一般化されてしまう。ヨーロッパでは、『排除』や『切り捨て』という言葉でネオリベラリズム(新自由主義)を問題化している。日本で起きている状況も、その前提なしには理解できない」(渋谷)
 団塊ジュニア世代に関する考察は近年様々な観点から行われており、そのたびに年長世代による「格差」「下流」といった言葉がメディアを賑わした。市場経済暴走による犠牲者と見る人もいれば、「2ちゃんねる」に代表されるネット文化に対する戸惑いから、戦後民主主義の行き詰まりの象徴のように評されることもあったこの世代。だがこの日の討論からは、いよいよ彼らが当事者として、社会に問題提起する時代が到来したことを感じさせる。

以文社
(2006-06-05)

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