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【人物登場】2009-12-09

小さな奇跡起こしたい 内海 直仁さん(ジュエリーデザイナー、RUST代表)

 「古いものをアレンジして、未来に残していける物作りを」――ロンドンの工房で、アンティーク素材を活用して作るジュエリー類は、商品とは言わず、すべて“一点もの”の「作品」だ。「いわば“現代版お守り”として身に着けてもらいたい」という。そこには、ラテン語のことわざなど、メッセージを手彫りで入れてある。今秋11月20日には、渋谷区神宮前の直営店「RUST」を大幅に拡充・改装してオープン。東京とロンドンの2拠点から、世界への動きを加速する。

小さな奇跡起こしたい 内海 直仁さん(ジュエリーデザイナー、RUST代表)

 RUSTのコンセプトは、「RUSTISM」「London make」に集約される。
 ブランド名であり、ショップ名でもある「RUST」は、日本語では「錆び」。「確固とした時間の経過とその賞賛」を意味する。あらゆるものが簡単に廃れていく現代、RUSTの原点は、時代を経ても“残るべき”ものづくり。つまり、英国の良質な素材、伝統技術と、流れ行く時代に耐え得るデザイン、そして、「身に着けるほどに湧く愛着」と定義している。とすれば、“錆び”とは、時間の経過に耐えうるものだけに与えられる「勲章」ともいえる。
 作品の修理も引き受ける。長きに渡って身に着けるものを、大切につなげ、受け継いでいく。そこに、RUSTISMがある。

「材料も何もすべてが揃う」という、昔ながらのジュエリー工房街であるロンドンのハットンガーデンで、「時間や時代を超えて残り続け、受け継がれていく物づくり」にこだわる。すべての作品には“ホールマーク”と呼ばれる、英国政府認証の刻印が打ち込まれ、それは「ヨーロッパにおけるアンティークの資格」となる。
その後、職人による手彫りのメッセージが刻まれて完成し、東京の直営店へと届けられる。この路面店は2006年2月にオープン。英国のアンティーク市場をルーツとする実際のビンテージパーツを使った別レーベル「RUSTANTIQUIS」を中心に、全コレクションを揃えてきた。

 その東京直営店は今年11月、1階がゴールドとプラチナ、ウェディング・ジュエリーをはじめレディス作品を揃えた“RUST GOLD”として完全にリニューアル。2階は、レザーとシルバーを組み合わせたメンズ・ジュエリー中心の“RUST SILVER”として、いわば新規出店にあたる。
 ロンドンのショップでは2008年8月、アトリエの半分を売り場に改造。
ロンドンファッションの最先端とされるBROWNSに、18歳の最年少で取り上げられて以来、フランスの「レクレルール」はじめ、ドイツ、イタリア、オーストリア、スイス、アメリカ、香港などの、名だたるセレクトショップに広がっていった。日本ではバーニーズNY、伊勢丹新宿店、ユナイテッドアローズGLR、エディフィス、ジャーナルスタンダード」・・・・。昨今は、卸売りの拡大が目立つ。
 
1980年宮城県生まれの29歳。国立工専の機械科を3年で中退し、靴づくりを学びに渡英。「学費を稼ぐため」に、独学で始めたシルバーのメンズ・ジュエリー製作が評価され、2003年に「RUST」を起こす。“彼女”と呼ぶパートナーのアルテミス・ラッセルさんと知り合ってレディスにも幅を広げ、「小さなデザイナーが奇跡を起こしていきたい」。当面は「物づくりと店に、自己資本の限界まで挑戦」しつつ、将来の夢は「建築家になって、商業建築と公共施設を手がける」。

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