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【人物登場】2009-10-26

地域密着・産学連携で 後藤 浩之さん(原宿祭実行委員長、東京デザイン専門学校専任教員)

 「単純な作品展ではなく、原宿という地域に根ざした東京デザイン専門学校として、新しい“原宿祭”を」――だから、近隣の竹下通り商店会とも連携して、竹下通りのキャラクター「竹下くん」のイメージづくり、新しい街路灯のデザインなどにも取り組む。商店会の幹部を招いて、プレゼンテーションも実施した。

地域密着・産学連携で 後藤 浩之さん(原宿祭実行委員長、東京デザイン専門学校専任教員)

 今年の原宿祭(学園祭=10月16〜18日)のメーンテーマは、「Love Design Love Harajuku 〜1000人の原宿カタログ」。今年度をキックオフイヤーとし、これから3年間、「原宿」をテーマに、地域とのかかわりや原宿文化について考えていく。2009年は原宿の価値の再確認、2010年は内容を整理して方向性を出す、2011年には、これからの原宿を情報発信と、3年計画で段階的な発展をめざす。
 実行委員長として、腕の振るいどころだ。

 原宿祭2009には、学生・教職員から一般の人たちまで1000人以上が、各人の考える「私の原宿」「竹下通りキャラクター・竹下くん」を、イラストや写真、文字、マークなどでポストカードに表現して参加。これら“1000人の原宿カタログ”は、会期中、メーン会場にインスタレーションとして展示、一般投票を含む優秀作品の選考を経て、連携先に提案というスケジュールだ。
 キャラクターについては、ライブペインティングを実施し、“竹下くん”に代わるネーミングも募集。
 あわせて原宿の団体や企業との様々なコラボレーションの様子も展示・プレゼンテーションするなど、産学連携活動のアピールも忘れない。
 これまでも、商店街原宿表参道欅会はじめ、地元・原宿の団体や企業とのデザインコラボを積極的に展開。モニュメントデザイン、壁画イラスト、防犯ポスターデザイン、エコキャンペーン映像、原宿ショップとのクラフトデザインコラボ、イベントTシャツデザイン、エコデザインシンポジウムの開催など、実績を重ねている。

 いま、昼間部専門課程には、グラフィックデザイン科からマンガ科、クラフト・アクセサリー科まで、2年制で7学科、および3年制のビジュアルデザイン科の合計8学科。そして、社会人一般・大学生向けに1年もしくは半年の「夜間講座」がある。1学年500人、全校で約1000人の規模だ。
 課外活動の指導にも熱心。原宿祭が終われば、今秋は東京ビッグサイトでの「エコプロダクト展」に学校として出展、そして希望者は神宮外苑での「東京デザイナーズウイーク」などにも出る。そして、3月の卒業展へと続く。
 原宿にあるデザイン専門学校だから、派手な校風と思い勝ちだが、実は「真面目で、堅実で、地味」という評価。今は6割強を女子学生が占めているが、7、8年前までは、ほぼ半々だった。
 求められるのは、即戦力であり、専門の技術。それだけに、教育内容は、”実学”そのもの。卒業生の就職は、従来は順調だったが、昨今はそうとも言い切れない。それだけに、学科ごとに就職担当教員を1、2名ずつ配置して、就職先の開拓・確保に余念がない。
 産学連携を強調し、原宿祭に際しても、就職担当を兼ねる実行委員長を先頭に、案内状を持って企業・団体を回る。 原宿祭の成功のためには当然のこととはいえ、そこには実はいくつもの意味があり、その重みは、いっそう増している。

 夜間講座には苦労人が多い。そして、人材を輩出している。
 実行委員長自身も、この夜間講座に学んだことが、その後の人生を決めた。高校を出て、桑原デザイン研究所でグラフィックデザインを学び、車のカタログデザインの会社に就職。その後、転職した広告代理店勤務のとき、折から人気の3Dアニメの製作技術を身に付けようと、東京デザイン専門学校の夜間講座へ。当時の指導教員に声をかけられ、夜間の非常勤講師になった。当時の教員にしてみれば、昼間の授業が忙しく、夜の講師は代わって欲しい、という思いがあった。声をかけられた方には、「今の会社では残業が大変で、身が持たない」という事情があって、双方の利害が一致。
 時に30歳だったが、非常勤講師だけで生活できるわけがない。昼間はフリーでグラフィックデザインの仕事をこなし、さばき切れない仕事は教員に回し、一種の“バーター”で、その後の10年を乗り切った。

 2年前から専任教員。就職部主任でもある。その一方、「コンピューターと向き合っているばかりでは」と、学生時代からの趣味であるサーフィンを6,7年前に復活。今も毎週のように車で、九十九里浜の片貝、本須賀あたりのポイントに通う。体格の良さといい、焼き込んだ肌の色といい、デザイン専門学校の教員というよりも、スポーツ選手の雰囲気に近い。
 東京生まれ、東京育ちの42歳。品川区で一人暮らし。

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