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事件記者シリーズ 暴力団抗争 駆け出し編1

 第一報は、夜中に近い時間帯だった。内容は、M一家のK組長が撃たれたらしいとの情報。繁華街のどまんなか。組長は頭などに銃弾数発を浴び、危篤状態。数台のパトカーの赤色灯が夜中の街を照らし、現場は緊張に包まれていた。
 地元の任侠団体のB一家とM一家の抗争は、組長襲撃という衝撃的な事件から始まった。私はまだ入社1年ちょっとの駆け出し、23歳。入社半年ぐらいで「法務局職員と業者との癒着」という独自ネタを書き、NHKが朝7時のニュースで追っかけてきたことから少しは知られてきたが、ほぼ新人。警察に詰め、頻発する発砲事件に翻弄されるように現場を回った。
抗争は、発砲を繰り返した。なかには一般市民が被害にあうケースもでてきた。確か発砲件数が6,7回の頃。親しくなった警察のある課長から発砲事件に関する分厚い内部資料をもらった。
 みてみると、その内部資料は、警察が正式に発表しているものより一件多い。ただの間違いなんだろうと思い、副署長に問いただしたところ、彼はいきなり激昂。「あなたは嘘つきだ。出禁にする」。全くの寝耳に水。当時は、夜中2時ごろ発砲と呼び出され、現場に行くと銃弾が壁に撃ち込まれ、暗闇もあってどこに発砲されたかわからない。絵にならないので制服の警官に指をさしてもらい、写真を撮った。そんなやつが漏れていたのだろうと軽く考えていた。
 まだ駆け出し。警察が隠ぺいするとは思っていなかった。今だったら、当然わかる。たぶん、警察官が誤って発砲、隠ぺいしていたのだ。まさか副署長にお宅の内部資料に書かれているとは口が裂けてもいえない。ただ、当時の彼の異常な激怒の仕方を考えれば、いまではそうとしか考えられない。


(2017-11-23)

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