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【人物登場】2009-12-14

”五感”で表せるアベニューに 重永 忠さん(生活の木社長、原宿表参道欅会専務理事)

 「これからの街づくりには、音楽を」――原宿表参道は「ジャズ、クラシック、そのいずれにも相応しい立地」として、音楽を通じての“街起こし”に熱が入る。理事長に次ぐナンバー2、専務理事を務める商店街振興組合原宿表参道欅会の7月総会でも、他の重要案件とともに承認された。  11年ぶりに復活、12月1日(火)〜1月10日(日)の41日間、欅並木に灯し続けるイルミネーションの正式名称も「表参道H.I.S.イルミネーション ベルシンフォニー」。この“ベル”が「前触れ」という。実際、140本近い欅の根元に10個ずつ配置した3種類のベル(鐘)が、風にそよいで微妙なシンフォニーを奏でている。  原宿はもともと、「無名のデザイナーが世界へと羽ばたいていった歴史を持つ。今度は、無名のアーティストが羽ばたける場作りを」。キャンドルナイトのときも、フルート奏者を招いた。  

”五感”で表せるアベニューに 重永 忠さん(生活の木社長、原宿表参道欅会専務理事)

 もうひとつのキーワードが「香り」。環境省も「香り百選」を選定、「表参道の欅の香りを発信したい」。
 要は、「五感で表せるアベニューづくりを」というコンセプトが、その根底にある。
 こうした感性は、高校から大学まで熱中したロックバンドによって磨かれた。今も「何か社会貢献したい」と、経営者仲間や雑誌編集長らとロックバンド「XQ’S」を編成して年2回、チャリティーコンサートに参加。
 原宿クエストホールを借り切ってのチャリティーイベント「Peace Quest 2009 Autumn-Winter」は、12月26日(土)午後2時に開演だ。

 本業も、他が羨むほどの順調ぶり。「ハーブ、アロマの専門メーカー&店舗展開」と呼ぶ、そのショップは先ごろ、全国で100店を突破した。世界の農場と契約して、原材料である植物の生産から始め、みずからの店舗で販売する方式で、「表参道の本店でやってきたことが、地方にも波及した」のが大きい。「地方にも商機を作って、まちづくりのヒントになれば」とメッセージを投げかける。
 年商も、2009年8月期で63億円、新年度は70億円・120店舗の見通しだ。ほかに、ハーブ&アロマのカルチャースクールが18カ所。
 海外では今、台湾に4店、3年で10店の計画。韓国ではネット販売が先行、2年後に店を作って10店舗をめざす。
 スリランカではリゾートホテル&旅行会社を経営、多角化も着々と進んでいる。

 店舗は、借りることはあっても、貸すことはない。「不労所得が入ると、商人のDNAが失われる」と。そのDNAとは、「だって(D)、何てったって(N)、あなたの息子でしょ(A)」。
 商人の血を引き継いだ父親は陶器の製造販売、その父、つまり祖父は写真館。いずれも「好きが高じて本業」になった。 
 3代続く商人の家系とはいえ、「3人とも、実は創業者」、という例も珍しい。

 1961年1月、今の欅並木に面した「生活の木」原宿本店の位置に生まれ育った48歳。1983年3月、東京経済大学経営学部卒業後、3年経ってさらに、中小企業大学校で1年、経営を学ぶ。いま世田谷区下北沢に妻と大学4年の長男、高校3年の次男。国内外に6つの会社を経営し、「1人の後継者では無理」と考えていたところ、「2人とも経営志望」が、何とも心強い。
 「鶏頭となるも、牛後となるなかれ」を座右の銘とする。

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