特集/コラム

【人物登場】2010-02-17

自分しかできないリメイクにこだわって 中野 恵介さん(リメイクファッションデザイナー)

 「作り込んだリメイク」――すべて手仕事で、ジーンズとか、すでにあるものをベースにしつつも、それを全く感じさせない、オリジナリティある“新商品”に仕上げている。  すべてが、一種の「受注生産」で、在庫も積まず、卸売りも一切しない。機能性は求めず、「ここにしかない、奇抜な部分に特化しよう」。それもメンズに特化して、「手作業で1着つくるのに、最低でも1カ月はかかる」という。  「自分のものは自分で作る」「新しい既製服よりも、加工する方が好きだった」という、青春時代の思いが、今もリメイクへと駆り立てる。つまりは「リメイクが好き」なのだ。  ファンは「ちょっと変わり者が多い」という。  ボトムスで8万円、ベストで4万円と、決して安くはない。それでも「若い大学生がバイト代を貯めて」「ネットで見て」と、申し込んでくる。

自分しかできないリメイクにこだわって 中野 恵介さん(リメイクファッションデザイナー)

 こんな調子だから、当然とはいえ、採算には乗りにくい。それでも何とか生活できる秘密は3つ。
 まず、第一に、自分の名前は出さずに、歌手のコンサートのグッズ、Tシャツなどのデザインと製品の納入。ついで、セレクトショップ「ROCKER AND HOOKER」で売っているオリジナル品の商品企画、三つ目がOEM。毎月、工賃で受けて相手先のために作って納品する。
 自らのブランドは「ロッカー&フッカー・ケイスケ・ナカノ」。これで、「いつか東京コレクション(東コレ)のステージに戻る」のが夢だ。 アトリエは今、渋谷1丁目のキャットストリートに近い「ROCKER AND HOOKER」の奥に置き、店番も兼ねる。
 もうひとつ、リメイクにこだわる理由は、エコとの関係。量産―廃棄の流れを見詰め直し、USEDを解体して再構築してできるファブリックで、新しいリサイクルを提案していく。
 こうした「モノを捨てない、モノを無駄にしない」という理念が通じ合って、芸能プロ「オフィスオーガスタ」および、同事務所所属アーティストたちが発足させた「A2R」プロジェクトとともに歩む。そこで得られた収益は、植林団体などに寄付している。

 1983年3月、北海道生まれ。滝川西高を経て札幌の北海道ドレスメーカー学院ファッション専攻科デザイナーコースを「主席で卒業」したものの「6月まで全社落ちて、就職で苦労」。東京の専門学校に進んだ「妹の用心棒に」と、親を説得して上京、アパレル会社で営業を1年半。
 「東京に出てきた意味は何なのか」と悩み、「東コレに出よう」と、友人とふたりで「シャミ」(のち「ROCKER AND HOOKER」)を始め、“オーダーの一点ものリメイク”の道をひたすら歩む。「引っ込み思案で、人前で話せなかった」少年が、「自己表現としての服」に出会い、夢を膨らませてきた。
 ファッション哲学は、「誰でもできることは他人に任せ、自分にしかやれないものをつくる」。三軒茶屋から溝口に移り住み、趣味は「服とバイク」。「仕事は明るいうちに終了」させ、ヤマハの「ドラッグスター」に跨り、お台場から湘南・江ノ島あたりを巡る。
 イケメンの元バドミントン選手は、身長183センチのスポーツ選手だ。

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