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【人物登場】2010-06-17

「志」持って企業と環境を変革 森 摂さん(「オルタナ」編集長・社長)

『環境とCSRと「志」のビジネス情報誌』を掲げる「オルタナ」が今春、創刊3周年を迎えた。「共鳴者が日々増え、大きなウネリを感じる」という。

「志」持って企業と環境を変革 森 摂さん(「オルタナ」編集長・社長)

 「オルタナ」の創刊は2007年3月。その創刊号のインタビューに、売上高の1%を地球環境保全のために寄付するなど、環境経営で知られる米国パタゴニア社の創業者兼オーナーのイヴォン・シュイナード氏が登場。「『社員をサーフィンに行かせる』本当の理由」を語っている。
 この独特の経営理念が、実は奥深いところで、環境保護につながっており、1999年、アメリカでの彼との衝撃の出会いが「オルタナ」のルーツと言っても過言ではない。
 売り上げの1%寄付の件といい、すべての綿製品をオーガニック(有機栽培)に切り替え、ペットボトルからの再生繊維を使ったフリース発売の件といい、「世界で最もラジカル」といわれる「新しい経営の価値感」に触れて、ショックを受けた。「もっとほかにもあるのではないか」「これらを伝えるには、自分のメディアを持たなければ」の思いが募り、ついには2006年9月のオルタナ社設立、2007年3月の「オルタナ」創刊につながっていった。

 創刊号のサブタイトルは「ヒトと社会と地球を大事にするビジネス情報誌」。幾度かの変遷を経て、いま『環境とCSR と「志」のビジネス情報誌』と定式化している。
 ここに「志」を入れたのは「読者との約束」という。基本はジャーナリズムだが、「企業や社会を変えよう。商業主義に走らず、使命は何年かかっても実現する」という決意表明でもある。
「ビジネス情報誌」とあるように、「本業はしっかり、社会貢献もしっかり」で、その両立をめざす。具体的には「すべての経営判断に“環境”“CSR”を反映させる」「企業の環境活動を必要経費としてとらえ、一定の割合を常に拠出する」など5項目を掲げ、「そういう企業が評価され、生き残れる」と呼びかける。
 そして、「雑誌の回りに、コミュニティを作りたい」。
 いま、支持層は、「1に若者、2に女性、3にシニア」という。「ちょっと弱いのが40、50代で、企業の中核の人」。増えてはきているが、「この層をどう取り入れ、第4の層にしていくか」が当面の課題としている。

 1960年12月大阪生まれの奈良育ち。名前の「摂」(せつ)は、クリスチャンの父親が「神の摂理」から名づけた。もうひとつは、大阪の古い呼称「摂津の国」から。
 東京外国語大学スペイン語学科に学び、「父が新聞記者だった」こともあって、日本経済新聞社へ。流通経済部などを経て、1998年〜2001年ロサンゼルス支局長。ここで、「世界で最も過激」「アメリカの資本主義から見ても異端」という、「パタゴニア」の創業者に出会ったことが、その後の人生を決めた。
 2002年9月の日経退社後は、アメリカ時代に知り合った人たちを軸に、ジャーナリストのネットワーク、NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・クラブ(U.F.P)を設立して代表。「彼らがいたから、オルタナができた」という。
 座右の銘は「情熱を持って、情報を伝える」。2年前から強調するのは「23・4度の傾き」。この地軸の傾きがあるからこそ、「四季が生まれ、生物多様性も育まれる」わけで、「革命が180度の転換」なら、これは、「ちょっと変えてみよう」という呼びかけだ。
 趣味の音楽ではロックとジャズを愛し、7月3日(土)、原宿クェストホールでのチャリティコンサートには、社会貢献バンド「XQ’S」のメンバーとして出演する。

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