特集/コラム

【人物登場】2010-06-28

日本の若手アーティストを世界へ キリク(石坂徹朗)さん(現代アーティスト・デレクター)

 日本の若手アーティスト21人を組織して参加した、今年5、6月のニューヨーク・アートレイツ展を成功に導き、「こうした海外展を世界中でやりたい」と張り切る。

日本の若手アーティストを世界へ キリク(石坂徹朗)さん(現代アーティスト・デレクター)

 背景には「日本は今、全体に元気がない。現代アートの世界も未発達で、若手アーティストが海外で認められたら元気が出る」という事情もある。先のニューヨーク展では、「WAGASHI ASOBI」(東京)とのコラボレーションで、日本庭園を模したアートなども好評。
 イベントプロデュースの一方、自身の作品「華髑髏」(はな・しゃれこうべ)も、ニューヨークのギャラリーに置かれることになり、「Kiriku Jewelry」もSOHOのセレクトショップで発売されるなど、いくつかの成果が生まれた。
 勢いを駆って、来年3月には再びニューヨーク展、そしてポートランド展の準備が進む。いずれもコンセプトは、「日本の若いアーティストを世界へ」。
 海外展に目覚めたのは2006年。ふとしたきっかけでスイスのジュネーブ展に、個人として出た。このときは何でも見てやろうとばかりに、パリから2カ月かけて、バックパッカーとしてヨーロッパ16カ国を歩き通し、ジュネーブまでたどり着いた。続いて、フランス・カンヌ展にも出品し、海外への関心を深めるとともに、自信もつけた。

 アーティストネームの「キリク」は、梵字の「キリーク」に由来する。古代インド仏教や大日如来といった話が、頻繁に飛び出してくる。
 「男と女、国と国といった関係を超越し、ボーダーレスの響きがいい」のだという。自身の作風も「はじめはシャガールが好きで油絵を描いていたが、どんどん抽象の世界に入り、現代アートにのめりこんでいった」。そこには「今、やるなら最先端のものを」という思いが強いのだが、「現代アートは、素材や物にこだわらず、何でもあり」が魅力。そして今、“生と死”という永遠のテーマを題材に、平面から立体、インスタレーションへと、レパートリーを広げている。

 1974年台東区のガラス問屋に生まれ、幼少期から絵に親しんだ。好きが嵩じて青山学院大を2年で中退し、グラフィックデザイナーの事務所へ。2000年からニューヨークへ留学、語学研修の後はFITでタイポグラフィクスを学びつつ、「ひたすら絵を描いて過ごした」という。
 9・11事件もあって帰国後は、代官山を拠点に、フリーランスのグラフィックデザイナー。この頃から、現代アートの作品発表を積極化していった。
 2006年、表参道ヒルズに若手を集めて「SIGAとMOGRA」展を開催したのを皮切りに、他のアーティストのディレクション、プロデュースに取り組む。また、2008年の上海アートフェアには、上野のギャラリーを参加させて、海外展にも乗り出していった。
 したがって、今の名乗り方は、現代アーティスト・ディレクター・オルガナイザー。そして、Birth審査員・龍門審査員・キリクギャラリー主宰。
 モットーは「有言実行」とし、「これまでも、言ったことは実行してきた」。趣味はサーフィンと神輿かつぎで、浅草・三社祭には毎年参加している。

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