特集/コラム

【人物登場】2010-08-18

新生”だっこちゃん”は、天使のモチーフで タケヤマ・フミヤさん(インダストリアルデザイナー)

 1960年に誕生し、誰もが腕に付けて一大ブームを巻き起こした”だっこちゃん”が、生誕50周年を迎えた今年、2010年の”だっこちゃん”は、天使をモチーフとしたカラフルな7色で蘇り、8月3日から、ゾウやキリンなど森の仲間たちもあわせた、ビニールマスコットのブランド「VINKYS」として、新たな展開を始めている。

新生”だっこちゃん”は、天使のモチーフで タケヤマ・フミヤさん(インダストリアルデザイナー)

 1960年発売で空前絶後の大ヒットとなった「だっこちゃん」の“本名”は「木登りウインキー」だが、ほとんど知られていない。「マスコミが名づけた」という“だっこちゃん”の愛称が一人歩きした形だが、その「だっこちゃん誕生50周年」の今年、「懐かしいけど新しいキャラクター」として蘇らせた。
 「すでに、会社をやめてから、18年になる」のだが、その“古巣”から声がかかったのが、今春。「初代だっこちゃんの雰囲気を持ちながら、誤解なく、懐かしさと可愛さを継承したい」というのが、基本条件だ。社長じきじきの依頼に、「じゃ、考えましょう」。
 「企画コンセプトを考えながら、キャラクターをつくる」のが、基本的なパターン。「キューピーもエンゼルも、世界的に歴史のあるキャラクター」ということから、「今度のだっこちゃんには、羽根を付けよう」。そして、「顔は、初代の雰囲気」で、しかし、かってのように人種・人権問題と、誤解を生むことのないように、「今のファッションから、女性の好むパステルカラーを取り入れよう」。
 そして、「タカラの古いパンフレットを紐解くと、クマ、バンビ、ゾウといったビニール製の動物キャラクター、縫いぐるみがたくさん」といったことも、ヒントになった。

こうした生まれた2010年のだっこちゃんは、「だっこちゃん天使」。優しさや温かさを表す「天使」をイメージしている。現代に合った可愛いテイストでありながら、どこかノスタルジックな雰囲気を持つ“懐かしいけど、新しい”キャラクターに生まれ変わっている。
 特徴的な”抱きつく”形状や”ウインクする目”、多色展開などはそのままに、新しく背中に天使の羽根が生えている。色は、黒やピンクをはじめ、流行のパステルカラーも取り入れた全7色。
 また、仲間たちはキリン、シカ、オオクマ、ロバ、ゾウの動物5種と、「王冠クマ」の全6種。動物には、それぞれ1個ずつ、”だっこちゃん”の形をしたクリップが付属しており、耳やしっぽなど本体はもちろん、様々なところに、くっつけることができる。
 「王冠クマ」は、「VINKYS」の王様的キャラクターという位置付けで、ロゴにも採用されており、「だっこちゃん天使」同様、抱きつく形状をしている。
 「VINKYS」は、タケヤマ氏のデザインによる可愛らしさ、ビニールトイという”レトロな新鮮さ”、”軽くてくっつく”という親しみやすさも魅力。
 若い女性たちに、ファッションアイテムとしても提案していく。

 1964年東京生まれ。本名は武山紀弥。怪獣や漫画、コマーシャルなど、1960年代〜70年代前半のグラフィックシーンの影響を受けて育つ。桑沢デザイン研究所インダストリアルデザイン科に学び、1986年タカラ(現タカラトミー)入社。「おもちゃ会社に入った友人は誰もいなくて、恥ずかしかった」と振り返る。
 「何の因果か、リカちゃん課に配属」され、“リカちゃんのパパ”“8人家族”“2階建ての大きな家”など、「キャラクターの創作」で貢献、「起死回生の逆転ヒット」を飛ばした。「こえだちゃん」の商品企画などでも活躍。
 1992年にフリーのイラストレーターとなり、若者に人気の雑貨「宇宙百貨」や毒キノコキャラクター「ドクッキノ」などを手がけて評価を高めた。
 哲学は「カワイイとは、魂が宿っていることであり、すなわち世の中を救う」。趣味は「コケシをはじめ各種の収集」「はがきに赤ペンで“落書き”」「町歩き」など。そして、「皆さんが喜んでくれる“庶民の味””商業芸術“をめざしたい」。
 アミューズメントメディア総合学院(渋谷区)の講師として、キャラクターデザイン学科の後進を育てる。

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