特集/コラム

【人物登場】2010-10-25

古布で渋谷川を再現、人も時も地域もつないで 西尾美也さん(現代美術家、西尾工作所代表)

 「装いの行為とコミュニケーションの関係性」に着目し、市民や学生との“協働”によるプロジェクトを、国内外で展開してきた。海外では、ケニアのナイロビでの創作活動、日本では渋谷の田中千代ファッションカレッジと連携した「ココロつなぐプロジェクト〜渋谷川の再現〜」が注目されている。いずれも“エコロジーの視点”で共通している。

古布で渋谷川を再現、人も時も地域もつないで 西尾美也さん(現代美術家、西尾工作所代表)

 パッチワークの作品シリーズは“Overall”と総称される。現在の原宿キャットストリートの下を流れる、往年の渋谷川(穏田川)を布のパッチワークで再現した大型作品なら「Overall:shibuya River」。何しろ幅3叩長さ50辰砲盖擇崑膩榛酩覆世韻法田中千代ファッションカレッジだけでなく、地元の穏田町会、原宿地区美化推進委員会、さらにはパタゴニア東京・渋谷店、通行人にも協力をあおぎ、古着を集めるところから縫製・仕上げに至るまで、まさに“総がかり”での取り組みとなった。その過程は、バンタンデザイン研究所の映像学科の学生たちが記録し、10月23日(土)の学園祭で報告・上映し、YU –TUBEにも流された。
 もともとは、“エコロジー“を教科に盛り込んでいる田中千代ファッションカレッジの渋谷校移転50周年企画の一環として、ファッションビジネス学科が中心となってスタートした取り組み。これにジョイントし、「つなぐ」をコンセプトに文字通り、「人の心、時間、そして学校間や地域をもつなぐ大プロジェクト」へと発展させていった。

 極めつけは、出来上がった“布の川”を実際に、キャットストリートに“里帰り”させ、頭上に掲げてパレードした路上パフォーマンス。「暗渠の下には、今も川が流れている」と、パタゴニア提供のリーフレットも配ってアピールした。近隣の専門学校生なども加わった、この一行は人目を引き、「何をしているの」と声をかける人、写メールに撮る人・・と、みんな笑顔、また笑顔。通行人も次々に加わって、みるみる内に100人をはるかに超える大人数に膨れ上がった。
 担当教員の裏話によると、「大きな布を持って歩くのは、警察でも異例の許可」。同じキャットストリートでも「表参道側は原宿署、パタゴニアあたりは渋谷署」と所轄が分かれているため、この両署を“つなぐ”作業が大変だった。
 学園祭では、この巨大な“布の川”を、階段の吹き抜けにインスタレーション作品として展示。報告会に続いて「エコロジーの視点から未来生活を考える」をテーマとするパネルでディスカッションも、田中静子校長みずからの司会で成功させた。
 “布の川“は、今度は「服に作り直して、来年2月の卒業展を飾る」ことになる。

 にしお・よしなり 1982年奈良市生まれ、名門の県立奈良高校から東京藝術大学へ。中学ではバスケットボールで鳴らし、本気でNBA選手になろうと考えたが、現実を悟って進学に切り替え、いま大学院博士課程の最終学年。東京藝大といえば、上野だが、学んだ先端芸術表現科は、茨城県の取手市。
 妻も京都大学大学院でアジアアフリカ地域研究科の博士課程。その縁で昨年、ケニア・ナイロビで「出合った人と服を物々交換して、それを写真に撮って、46人分をズラッと並べる展示会」を現地の食堂で開催し、成功させた。今年1月には、ナイロビで2回目となるパッチワークの作品展を行い、帰国後の報告・上映会が縁となって、田中千代ファッションカレッジの“布の川”につながった。座右の銘は、マイケル・ジョーダンの本から「挑戦せずに、あきらめることはできない」。趣味は「創作活動」といい、「長男も生まれたことだし、何とか今年、大学院を終えたい」。生活の方は、「いくつかのプロジェクトを同時並行で進め、非常勤でお茶の水美術専門学校の講師」を務めてしのぐ。
 祖父が創立した西尾工作所はミシンの部品製造会社だが、父の代で中国へ技術移転。いま3代目が創作活動の拠点にしている。「工作所というのは、手仕事のイメージがあって、英語でいえば“ワークショップ”」と、気に入っている。

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