特集/コラム

【エリア特集】2005-11-30

古き良き時代を偲ばせるパリの店

タイムスリップ気分に浸れるULTRAMOD

古き良き時代を偲ばせるパリの店

 10月には陽気を享受したパリの街も、11月も終わりになりぐっと気温が下がって木枯らしが舞い始めた。こんな物悲しい雰囲気のときに訪れると心を和ませてくれる地区がある。キャトル・セプトンブルのカルチエの近辺には、オペラ座を始め証券取引所など格式ある建物に混じり、古き良き時代を偲ばせるお店やパッサージと呼ばれるいわゆるアーケード街が残っている。

キャトル・セプトンブルのメトロの駅から20-30メートルのところにあるULTRAMODというお店もそのひとつだ。ここには今ではもう手に入らないような1950年代のサテン、タフタやベルベットの様々な色のリボン、刺繍入りやゴブラン織りのテープ、新しいものではワイヤの入ったリボンなどがあり、また高級帽子店で仕様するような帽子の材料、いろいろなカーテンの装飾品などもある。

 店には小さい頃に見かけた足踏みのシンガーミシンや昔ながらのレジーの機械がアンティークの香りを醸し出し、内装も一昔前のままの様相を呈している。お店にたつ人たちもゆったりとお客さんに応対していて何十年か前にタイムスリップしたような気分に浸れる。

 フランスの北部やリヨンなどが商品の主な調達先だそうで、新しい材質のものに混じってかなりの商品が1950年代という。タフタやベルベットのリボンなどは人工的な鮮やかな色と違い、深みを帯びて手に心地よくなじみ、品の良さを感じさせる。客層もスタイリストからインテリア装飾の職人さん、個人の客など様々で、また色彩関係の会社からも色の研究に訪れるという。フランス版ELLEの室内装飾特集11月号にも昔のモードの復活“vintage”を象徴するお店として紹介されるなど、雑誌などにも取り上げられにわかに人気を呼んでいる。

 このお店は、1950年当初もともと帽子職人だったジョセフ・アジーさんが戦後に在庫を買い取り開いたもので、その後拡張され息子さんが引き継いだ後は店が二つに分かれるなど変遷をたどるが、1995年にここからすぐ近くの証券取引所によく出入りしていた保険会社のディレクターだったジャン・フランソワ・モランさんがお店が売りに出されているのを通りがかりに知り、退職を機に二つの店の一方を譲り受けて今にいたっている。3年前には帽子やカーテンの装飾品を扱っている残り半分のお店も買い取り、モランさんはまだまだ倉庫に何十年も眠っている品物もすべて知り尽くしている。

今ではなかなか見かけることのできない20センチ幅のタフタのリボンに出会うだけでも嬉しくなるが、時間があればいろいろな色のアンティーク調のフラノなどを使って帽子の作り方も教えてくれる。

ULTRAMOD 最寄のメトロ:Quatre Septembre
3 & 4 rue de Choiseul Paris 75002
  Tel :01 42 96 98 30 /Fax : 01 42 60 45 57

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