特集/コラム

【おみせ拝見】2006-04-10

「売るのは子育てのためのコミュニティ」
ボーネルンド本店(子供用遊び道具)

原宿・神宮前1丁目に、見ているだけで楽しくなってくる子供用遊び道具の店がある。全国81箇所に店舗を展開する、(株)ボーネルンドの本店だ。「店舗を単に商品を売る場ではなく、地域の人々が子育てをしやすくするためのコミュニティにしたい」という、ボーネルンドの考えを聞いた。

「売るのは子育てのためのコミュニティ」 ボーネルンド本店(子供用遊び道具)

ボーネルンド

カラフルに彩られたボーネルンドの遊び道具を眺めていると、大人でもつい手にとって、遊び方を想像したくなるような楽しさを覚える。実際、付き添いのはずのお父さんが夢中になってしまい、売り場から離れられなくなってしまうことは多いそうだが、主にヨーロッパ各国から仕入れたこれら商品は、あくまで子供が手にとって遊ぶことを年頭に選び抜かれたものだ。従って、バケツひとつとっても取っ手の部分が通常より太く、一度に沢山の水を運んでも、子供の小さな手が痛くならないよう配慮されている。

そんな商品の選択基準の中にあっても、最も重視されるのは「子供が自分で遊び方を考えることができること」だそうだ。コンピュータゲームのように大人が組んだプログラムをなぞるのではなく、子供が自分で遊び方を工夫し、誰かと協力したり、達成感を覚えたり、失敗してもやり直しが利くことを学ぶこと。遊びを通しての試行錯誤、主体的な思考の積み重ねが、自立した人間の育成にとって不可欠だと考えるボーネルンドの商品選択において、それは何よりも妥協できないポイントだ。

 

原宿本店の店頭に大型遊具や砂場を置いたのも、そうした理念を具体化しようとする試みのひとつ。公園など子供の遊び場が少ない原宿だけに、店の前を通りかかると、お母さんに連れられた小さな子が嬉々として砂にまみれている姿を見かけることもしばしばだ。ボーネルンドによれば、「店舗を単なるモノを売る場とは考えたくない。地元のお母さんたちにとって、お子さんを育てやすい環境を提供する場にしていきたい」のだという。

原宿本店で月2回、毎週第3水曜日と日曜日に行われる「子育ておしゃべりタイム」も、そうした意図の延長上にある。これは育児雑誌「プチタンファン」の元編集長で現教育評論家の高江幸恵さんが、地元のお母さんたちと座談形式で育児について語り合うというものだ。様々な育児の事例を見続けてきた高江さんと母親たちの育児話は、お茶を飲みながらリラックスして行われ、しかり方のコツや好き嫌いのなくしかたなど、実に多岐にわたるという。

経済的な要因から二人以上の子供を持つことがなかなか難しくなっている昨今だが、逆に少ない子供に対し、親が愛情とお金をますます掛ける傾向にもあるという。つい甘やかしすぎてしまうのも無理なからぬところだが、親にとってもそれは多くの場合不本意なことだろう。「愛情は注げるだけ注いでも、決して甘やかしはしない」という育児の理想を追う上で、ボーネルンドの遊び道具や環境が、若い親にとって何がしかのヒントになるだろうか。

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