特集/コラム

【人物登場】2006-06-12

神宮前小学校・川島信雄校長インタビュー

表参道ヒルズのすぐ隣に立地し、1学年20名前後、全校児童数130名という原宿の神宮前小学校。この学校に4月より、新しい校長・川島信雄氏(52)(写真)が就任した。これまでは武蔵野、府中、国立など、郊外各市の比較的大規模な小学校での経験が長かった川島氏。初の小規模校となる神小に赴任して1ヶ月の間に感じたのは、「ひとつの大きな家族」の一員になったかのような感覚だという。

神宮前小学校・川島信雄校長インタビュー

「ひとつの家族」になれる小規模校

 

神小では川島氏赴任以前から、毎月その月に生まれた1〜6年生が集まって昼食を食べる『お誕生給食』を実施している。初参加となった4月のお誕生給食で、川島氏は6年生の女の子が母親役になり、下級生の子に配膳をしてあげるなど世話を焼く姿を目の当たりにした。

嫌いなメニューを食べられずぐずる下級生に、「3個のうち1個でも食べてみなよ」と6年生がアドバイスしてあげたところ、普段は全部食べきれないはずのその子が見事に完食。赴任してすぐにこうした光景を目にしたことで、川島氏は、1年生から6年生までの皆が容易に顔馴染みになれる小規模校ならではの良さを、即座に悟ることができたという。

 

教師としての長い経験により、「6年生を見ればその学校の全てが分かる」と断言する川島氏は、神小の子どもたちの心根については何ら不安を抱いていないようだ。学校挙げての表参道美化運動である『ピカピカけやき大作戦』もすでに見学したそうだが、大人でも嫌がる道端にこびりついたガムを剥がす仕事を、神小の上級生たちがいやな顔ひとつせず、当たり前のこととして行っていることに心底驚かされたという。「おそらく最初は先生からやるように言われたのかもしれないが、今では子どもたち自身の中に、自分の町をきれいにしたいという思いが確実に育っていると実感した」(川島氏)

 川島氏の出身地は秋田県能代市。40年前にそこで育った自分自身のことを振り返ると、年上のガキ大将たちとの遊びの中から学んだことは、ある意味で親や先生から教わること以上に多かったという。神小生に限らず、子どもは常に身近な人間をモデルにすることで育つものだが、「日常接する上級生たちとのコミュニケーションを通じ、知らず知らずのうちに自立の方法を学べる環境が整っていることは、神小生にとって計り知れない強みになるはず」と語る。

 

赴任して一ヶ月あまりのうちに、すでに数多くの神小出身者と会う機会に恵まれたとのことだが、彼らと話をする際には例外なく、神小出身であることに強い誇りを抱いていることを感じるという。  「今いる子どもたちに、(出身者たちの誇りを)すぐに理解しろと言っても無理だと思う。だが、彼らが大人になり他の学校と神小を比較できるようになったとき、自分が育った場所は素晴らしいところだった、と実感してほしい」

 

そのためにも今後は小規模校ならではのよさを活かしつつ、1クラス25人程度の理想的な児童数を確保することが、校長としての自らの使命と考えていると力強く語る川島氏だった。

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