特集/コラム

【社説】2003-12-15

是々非々論で街の将来を

 サイレント マジョリティー。声なき多数派という意味になるだろうか。  月刊原宿新聞を発行して四ヶ月が過ぎた。取材を通じて感じたことは、住民の代表者と呼ばれる人たちと一般の住民との情報の落差だ。一般の人たちといってもこの地域に住めるぐらいだから、それぞれ社会的なステータスも高いに違いない。ただ、その人たちの声が聞こえてこない。

是々非々論で街の将来を

 留置場建設構想、イルミネーションの廃止など全国的も話題になる事案に事欠かない。裏を返せば、それだけ原宿、表参道という街は全国的なブランドになった証ではないだろうか。ただ、率直にいわせてもらえば、住民代表といわれる人たちのなかにはいまだにムラ社会の論理が横行しているのも事実。街の将来を左右するような話が一部の人たちの考えだけで決まっていいものだろうか。

 是々非々論。某首相がつかった言葉だが、いい事は誰がいっても正しいし、悪い事は誰がいってもおかしい。ディベートという土壌がない日本では、えてして問題の論議は、個人的な感情の次元までさげられてしまう。なにかと色わけしたがる。出身校、所属の会社であったり。本質的な事よりレッテルをみた方が安心するのかもしれない。ただ、問題はそんな低次元の話しで大事なことを忘れていいものだろうか。

 神宮前地区は、一丁目から六丁目まで約一万世帯の人たちが生活している。さきの留置場建設構想の住民集会に参加。出席者は二百人足らずだった。ほとんどは年配の方ばかり。このなかで、若い女性の発言が胸に刺さった。「あたかも三百人で決まったかのようなトーンダウンされた報道は心外」だと。彼女は至極当たり前のことを質問していたが、会場からは拍手がでていた。

 本紙は神宮前地区約一万世帯に全新聞に折り込む形で無料配布している。目的は住民代表と一般の人たちとの情報の格差を埋めること。二年前にニューヨークから帰国したところ、イルミネーションはなくなり、原宿に留置場を建設する構想が持ち上がっていた。なぜなのか、が正直な気持ちだった。自分自身への疑問に応える形でこの新聞をつくりだした。

 本業は貿易会社の経営。巷間、揣摩推測する人もいるようだが、スポンサーは自分の会社。狙いはさきほど書いたこと。広告料もいまはいただいていない。将来、みんなが必要な新聞だと認めてくれた時にはちゃんとお金をいただくつもりだ。いらないものであれば、すぐに廃刊にする覚悟だ。

 私たちの子どもたちもこのさき住むであろうこの街の問題についてちゃんと向き合うことは、大人たちの役目ではなかろうか。サイレント マジョリティーの声をききたい。それが願いだ。

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