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【人物登場】2009-11-02

“共同”で活性化へ 高橋 嘉一さん(URAHARA ORG.ディレクター事務局長)

 「大不況の今だからこそ、新たなビジネスモデルをつくるビッグチャンス」と、精力的に動く。ファッション情報の発信地とされる原宿、とりわけ“裏原宿”を基盤に、WEBサイトはじめ、これまでに培ってきたノウハウを発展させ、近隣の商店会なども巻き込んだ活性化構想の具体化が、目下の最大のテーマ。そのためには、新しい集荷・配送システムの構築は欠かせない。“共同”がキーワードだけに、地域連携の域を超えて、全東京から、さらには日本全体へと、夢は広がる。

“共同”で活性化へ 高橋 嘉一さん(URAHARA ORG.ディレクター事務局長)

 2002年4月には、裏原宿のオフィシャルサイト「URAHARA ORG.」を立ち上げた。いま320店の会員を持つ。裏原宿エリアには、飲食その他も含めて約700の店舗があり、そのうち約450が物販店舗。紙媒体では、それらすべてを網羅した「原宿地図」を発行し、「URAHARA DEEP MAP」として好評だ。
 そして、今8月には“裏原宿最強ショッピングサイト”をキャッチフレーズに、ファッション中心の「Urahara Style」(裏原スタイル)がグランドオープン。現状の23店から、来夏までには150店をめざす。
 いずれも「裏原エリアに実店舗を持っていること」が、前提条件だ。

 新サイトは、実店舗なら毎月支払う固定費が不要。売り上げに応じて一定の割合で支払う方式を採用していることから、出店経費の負担は軽い。ここに、比較的小規模な新興・個性派ショップが多い裏原宿の店舗にとって、出店しやすいメリットがある。
実店舗での売り上げが苦戦となれば、なおさらWEB販売への期待はふくらむ。大手にとっても、事情はほぼ同じだ。
 「景気が悪いからこそ、新しい裏原を構築し、活性化を図る好機」という根拠は、実はここにあるのだ。
 
 とはいえ、ネックも多く、また大きい。そのひとつが物流問題。ショップにしてみれば、ネット販売で売り上げをとりたいのは、山々だ。だが、閉店後に梱包作業、出荷では、実際のところ回っていかない。
 そこで、これら後方業務をサポートするシステムが必要になってくる。
裏原にはいま、1日あたり2500〜3000個の荷物の出入りがあるという。一説によると、その7割が佐川急便の取り扱いだが、その佐川にしても、この不況下で物流量は減少、コストはアップ。物流業者の悩みもまた、共通している。2、3位以下の業者にとっては、なおさらだ。
 となれば、ショップ、運送業者の双方とも、「共同配送」に向かわざるを得ない。

 共同配送の実験は、今秋から始まっている。佐川急便が軸となって、裏原宿用の共同トラックを仕立て、1台の車を核に、「カート方式」と呼ばれるシステムで個別の集配を効率化し、浮かせた人件費で諸経費をまかなう。資材・梱包費などで、ショップ側にも負担はかけない、というのが基本方針。
 加えて、路上駐車の難問も、環境・美観などの問題も解決できるなど、利点も多い。
 今秋には、関係業者、ドライバーなどを集めて、説明会と決起集会を開催。ドライバーがアンケートを持って各ショップを回り、意見の集約と“参加オルグ”の最中だ。
 一定の広さが求められるセンターを、地元に設置する課題が悩みのタネだが、早期の本格スタートを目指している。

 竹下通りや原宿表参道欅会など近隣の商店会とも歩調をあわせて、より大きな単位にしたい。当面は渋谷区内としても、やがては隣接する港区、中央区、新宿区といったエリアにもネットワークを広げて、東京でまとまれば「東京パス」、さらには「ジャパンパス」といった構想も浮上している。
 行政との連携も欠かせない。そのためにも、構想を大きく広げることは、いわば必要不可欠かもしれない。 

 1967年、原宿生まれの原宿育ち。高卒後、輸入雑貨の会社に入って、不動産会社に転職。その後、実父の不動産管理会社に移って、ここで「URAHARA ORG.」を立ち上げた。  
 2006年5月には自らの会社「ミーム」を設立。広告業を主体に、エリアの“潤滑油”の役割を果たしてきた。
そして、今日も巨体を揺らしながら、組織化、共同化に向けて駆け回る。
 今秋から地元の神宮前商店会の理事に就任。「URAHARA ORG.」も、商店会の公式ホームページへと向かう。
 エリアを「メディアにする」のが夢だ。

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