編集長ブログ

【時事】2009-11-12

虫に書く−事案の真相に鋭いメスを

 「巨悪は眠らせない」。かつて東京地検特捜部の首脳はそう豪語、政界の汚職・疑獄事件などに捜査のメスをいれてきた。
「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」という思想が背景にあった。権力への監視機関としての司法。その最大の役割は、司法を通して社会正義と公正な世の中の実現にあるのではなかろうか。眠らせないのは、とかげの尻尾ではなくあくまで「巨悪」だったはずだ。
 第四の権力と言われるマスメディア。ニューヨーク・タイムズのニール・シーハン記者はベトナム秘密文書をすっぱ抜き、世界を震撼させた。タイムズでは、この原稿の掲載にあたり「国民の知る権利」「国益」について社の存亡をかけて喧々諤々で論争、最終的には紙面掲載に踏み切った。問われたのは、「国益とは何か」それは誰にとっての「国益なのか」だった。歴史の教科書にでてくるような話かもしれないが、こうした背景があってニューヨーク・タイムズは、クオリティ・ペーパーとしての存在感を高めた。そこには、ジャーナリズムとしての「誇り」と「矜持」があった。
 ずいぶん沈静化したが、この夏、日本では芸能人の麻薬使用問題が連日テレビ、週刊誌を賑わした。確かにセレブだった芸能人の転落劇は大衆の興味をひくネタだったのだろうが、その実態はあくまで末端の使用者の逮捕劇。大切なのは、その麻薬の日本への流入、入手経路や汚染ルートの全容解明ではないのか。刹那的な報道、捜査で終わるべきものではないはずだ。
 逮捕の端緒が、職務質問なのは外勤職員の手柄だろうが、捜査機関の役割は、夜の街に蔓延しているかもしれない麻薬ルートの解明、根絶がその絶対的使命。芸能人はもとより、一般の若者たちにも入手がたやすくなったとするならば、そのほうがよほど深刻だ。この事件での「巨悪」は誰なのか。大学生の麻薬使用などが報道されるが、よほど重要な問題のはずだ。狂想曲のような一連の報道は、ことの本質からずいぶんかけ離れたものにしかみえない。
 原宿・表参道のイルミネーションがこの12月から11年ぶりに復活するそうだ。過去、廃止に追い込まれた経緯には、ごく一部の住民(五四人)が環境問題をたてに反対運動を展開、地元商店街を提訴した。
あらたな住民運動と一部のマスコミを巻き込んだ形で報道合戦となり、スポンサーが降板、やむなく廃止に追い込まれた。結局、裁判は一部の住民側が敗訴、反対運動の代表者は、その後、貸しビル業者に転進、神宮前の住人でもなくなった。これも狂想曲後の経緯を報道したメディアはなかった。私が、米国にいたときの出来事だ。メディアは大きな権力なのだ。
 01年の「9・11」同時多発テロ事件後、帰国。本紙を2003年発刊した。その趣旨は、当時地元で起きていた大規模留置場建設問題や、なぜ原宿イルミネーションがなくなったのかなどの疑問に、私自身と住民の人たちに応える形で発刊した。当時地元で「タブー」扱いだったイルミネーションの廃止についても2003年12月、記事にした。その想いを知っているだけにこの復活劇は、神宮前のほとんどの住民、関係者にとっては、口にはだせない喜びがあるのも事実だ。
 月間原宿新聞は、神宮前1万世帯に無料で配布するコミュニティ・ペーパー。当然影響力も限定的。それは、ニューヨーク・タイムズなどと比較するのもおかしいジャーナリズムのちっちゃな「小さな虫」かもしれない。ただ、その想いだけは負けないつもりだ。「是々非々」。真実は何なのか。毀誉褒貶があるかもしれないが、本紙のスタンスで書くべきだと思うことを今後も書いて続けていきたい。

編集長ブログ一覧